2008/1/18 金曜日

本当の萌えスロとは その6

Filed under: 未分類 — ssk @ 23:26:06

 「潮時……? 何を言ってるの?」

祐子はスロウの一言に首を傾げた。

「祐子ちゃんも知ってるだろう? このブログの人気を」

「えっ!? ま、まぁ知らないことはないけど」

「なら話が早い。実はさ……」 

そこで佐藤が困惑しながら口を挟む。 

「あ、あの~、私の話は……」 

「おっと、佐藤さんは席を外してくれ。もう萌えスロのことは分かったろ? 副部長の失言は謝るけど、世の中には色んな“萌え”があることを覚えておいてくれよ」

「わ、分かった。じゃあ私は社に戻るよ」

――秋葉原に残った3人は、駅前のコーヒーショップに入った。

「山岡、さっきの話は何だね?」 

「……副部長、“究極のスロット”って何でしょうね」

「それを見つけるのがお前の仕事だろうが」

「オリ法でこの企画を始めたのが4年前。それなのに、まだ答えが見つからない。俺は疲れたよ」

「スロウ、何言ってるのよ! 本家なんて何十年も連載してるじゃないの!」

「祐子ちゃん、もう本家とか言うのはヤメてくれ。余計な問題は抱えたくない」

「まさか、もう辞めたいの?」

「……このブログ、ダントツの不人気なんだ

「それは山岡のせいじゃない! 作者が悪いのだ! 更新をサボりまくり、しかも面白くないストーリーばかり書き連ねやがって! 訴えてやる!」

トミーは手元のカフェラテをこぼしながら憤慨している。 

「副部長、やめてくれ。俺と作者の連帯責任さ」

「作者を代えてもらって、もう一度頑張れば良いじゃない!」

「それも一興だけど、もう本当に良いんだ。ちょっと休みたいし」

「だ、だけど……」

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 窓の外はアキバ系、仕事を終えたサラリーマン、OLなどでごった返し、秋葉原らしい喧噪に包まれている。3人は夕暮れに映えてきたネオン看板をぼんやり眺めながら、唯々沈黙していた。

 数分後、意を決したようにスロウが口を開いた。 

「副部長、祐子ちゃん、俺は旅に出るよ」

「えっ?」

「何だって? 会社はどうするんだ?」

「会社? んなこたぁどうーでもいい」

「良くないわよ! タモリ口調で言っても事の重大さは変わらないわよ!」

「ちょうど秋葉原だし、つくばエクスプレスでも乗ろうかな」

「山岡! 今からつくばに行っても何も面白くないぞ! せめて総武線日比谷線にしろ!」

「副部長、そういう問題じゃないでしょ! スロウ、考え直して!」

「じゃあ一旦上野に出て、そこから北斗星で北海道に行こうかなぁ」

「んもう! 良い夢旅気分に浸ってないで、ちゃんと現実を見なさい! このバカ!」

祐子の右手がスロウの頬を直撃し、その音が店内に響き渡った。

「ッテテ……。祐子ちゃん、ごめんよ。でも、もう決まったことなんだ。引き留めてくれて本当にありがとうな」

「スロウ、本当に行っちゃうの?」

「ああ。会社にある私物は適当に処分してくれ。よろしくね」

「や、山岡……」

「副部長も元気で! 

みんなも元気でね! また会える日まで!」

――そして、スロウは電気街口の雑踏に消えた。と同時に、この「すろしんぼ」もひっそりと幕を下ろす。

2008/1/10 木曜日

本当の萌えスロとは その5

Filed under: 未分類 — ssk @ 19:54:05

祐子は話を続ける。

「スロウ、“萌え”という言葉には色んな意味があるし、もちろん“萌えスロ”の意味合いも一つじゃないのね」

「うん。世間一般のイメージから脱却しないと物事の本質は見えないもんだよね。世の中じゃ『萌え=オタク』『萌え=若干エロい』と思われているけど、決してそれだけじゃない。……佐藤さん、『萌え』という言葉の本当の意味を知ってるかい?」

「……いや」

「かの有名なウィキペディアによると……」

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「お手軽だね」

「クソッ! じゃあ現代用語の基礎知識によると……」

「スロウ、どっちでも良いから早く言ってよ!」

「はっきりとした定義はないらしく、要するに『人物やものに対して深い思い入れを抱く』ことを“萌え”と表現するらしいんだ。つまり、性的な意味も含めつつ、もっと広い範囲で使われる言葉なんだよね。本来はさ」

「……ってことは、個人の感情・感覚によって萌えの定義が変わるのか?」

「副部長、たまには良いこと言いますね。どんなに硬派なキャラでも、世の中には“萌える“人もいる。佐藤さんが萌えスロであることを否定した『エリカ』だって、萌える人が出てくるでしょう」

「萌えは強制するものではなく、安易に否定できるものでもない……ってことか」

しばらく黙っていた佐藤が、口を開いた。 

「トミーさん、じゃあ雑誌が“萌えスロ”という言葉を使うのも良くないことだろ?」

「ギクッ!……確かに先入観を増幅させる言葉かも。や、山岡、どうする?」

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(C)NET CORPORATION (C)TECMO,LTD.

「うん。簡単に萌えスロという言葉を使うのは良くない。でも、各雑誌は慎重に使ってるハズさ。ウチの本はメーカー側がパブリックイメージとしての“萌え(キャラ)”を全面に押し出した場合のみ、萌えスロと表現するよ」

「……山岡、小難しい説明で誤魔化してないか?」

「いや、佐藤さんも分かったでしょ?」

「ZZZ……」

「ウソ~ん!」

「スロウ、これは『話がつまらない』っていうアピールよ!」

「俺だって分かっている。そろそろ潮時かもな」

(続く) 

2007/12/11 火曜日

本当の萌えスロとは その4

Filed under: 未分類 — ssk @ 3:40:38

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スロウは他のメンバーと佐藤を連れてタクシーに乗り込み、1メーターで秋葉原に到着した。

「運転手さん、領収書ちょーだい。はい、どうも。……さて、と。佐藤さん、ここがオタクの聖地・アキバですよ!」

「言われなくても知ってるよ。会社の近所だからよく遊びに来るしね。っていうか、1メーターで領収書?」

「別に良いでしょ! こっちも大変なの! じゃ、早速パチ屋を覗いてみましょう」

「ちょっと待ってくれ。ここに私を連れてきて、一体何を企んでいるのだ?」

ここで祐子とトミーも口を挟む。

「そうよ。わざわざ秋葉原まで来て、パチスロを打たなくても良いじゃない」

「そうだ。メイド喫茶で一服しようじゃないか。それとも海賊版のDVDを……」

「んもぅ、副部長は黙っててよ! 俺がアキバに来た理由は簡単だ。佐藤さん、アンタは『萌え=オタクが好むエロい女の子のイラスト』って言ったよね」

「まぁ、確かに言ったが」

「その仮定が正しければ、オタクの街・アキバのパチ屋では“エロいキャラ”が登場する台に人気が集中するハズだよね」

「そうだろうな。ネットさんやKPEさんの台なんて、アキバじゃ大人気だろう。反対にウチは敬遠されるかも。だって萌えないもん」

「ふふふ、それはどうかな」

4人は電気街の近くにあるパチンコ店に足を運んだ。

「あれ? お客さんの層は他の地域と変わらないみたい」

「祐子ちゃん、鋭いね。アキバのパチ屋だからと言って、オタクばかりが打っているワケじゃない。若者が若干多いのは確かだけど」

「それに、萌えスロだけ異様に客付きが良い……ってワケでもなさそうよ」

「そう。萌えスロと呼ばれる台も、佐藤さんの会社の台も、そしてジャグラーも、満遍なく客が付いている。佐藤さん、この状況を見てどう思う?」

「……」

「副部長、俺の真意が分かったかい?」

「山岡、それどころじゃない! 万世橋にあった鉄道博物館が消えてしまった!」

「ずっと前に閉館したよ! 早く大宮に行けよ!」

「……スロウ。私、分かったわ。“萌え”も“アキバ”も“萌えスロ”も、言葉のイメージが先行しすぎてる」

(続く)

2007/11/22 木曜日

本当の萌えスロとは その3

Filed under: 未分類 — ssk @ 13:11:24

 そして翌日。スロウ、祐子、トミーの3人は「ピッツア屋」へ向かった。

「すみません。私、辰巳出版の粟田と申しますけど、佐藤さんはいらっしゃいますか」

受付嬢に呼び出してもらうと、しばらくして硬い表情の佐藤が現れた。

「辰巳さん、取材拒否と言ったハズですが。ん? 後ろに隠れているのはトミーさんでしょ。一体何しに来たんですか」

「見つかっちゃった……。ほら、山岡! なんとか言って!」

「んもう、副部長はチキンだなぁ。佐藤さん、今日は貴方に文句があって来ました」

「ほほぅ、いきなり喧嘩腰ですな」

「いや、別に喧嘩したいワケじゃない。先日、トミー副部長が失言しましたよね」

「失言? いや、あれが本音でしょ。どうせウチなんてクソ台しか作れない3流メーカーですよ」

「スロウ、完全に逆ギレしてるわ。これは強敵よ!」

「シーッ! 祐子ちゃん、声がデカい! 相手に聞こえてるよ!」

「……どこまでも不愉快な人たちですね。それで、反論ってのは何ですか? 私も暇じゃないので早くしてください」

「ああ、そうだった。佐藤さんは『エリカ様』を萌えスロと呼ばれて怒りましたね」

「私たちはあくまでも世間一般にウケる機種を作ったんです。それなのに萌えスロなんて言われて、もう差別発言ですよ。そんな論調で記事を書かれたら大変ですから、怒るのも当然でしょ?」

「フンッ、その発言こそが差別だと思うな」

 

スロウは真顔で言い返し、その場に緊張が走った。

「ほほぅ、面白い。どこが差別なのか説明してもらおうか」

「よし、良いだろう。祐子ちゃん!」

「えっ? いきなり何よ?」

「アキバにいるヲタクと、上野公園で寝ているオジサン、好きなのはどっち?」

「え~っと……どっちも嫌。っていうか、その質問は若干危険な香りがするわ。苦情が来るわよ」

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「じゃあさ、マツタケは好きかな?」

「キャッ! 下ネタ!?」

「違うよ! 秋の味覚、あのマツタケを好きかどうか聞いてるの!」

「まぁ、人並みに。贅沢品だから滅多に食べられないけど」

「マツタケってさ、日本では贅沢品だけど、他の国じゃ見向きもされないキノコなんだよな」

「そうみたいね。日本人だけが好んで食べるらしいわ」

「じゃあさ、マツタケを食べない外国人はおかしいと思う?」

「文化の違いだし、何を食べるかなんて個人の自由でしょ」

「そうだよな。……佐藤さん、分かった?」

「全く分からない。この小芝居は一体何なのだ?」

「あのさ、“萌え”の意味を知ってる?」

「知ってるさ。オタクが好むイヤらしい女の子のイラストだろ?」

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(C)NET CORPORATION (C)TECMO, LTD.,

「0点。やっぱり偏見に満ちているな。ちょとさ、一緒にホールへ行かないか?」

(続く)

2007/11/8 木曜日

本当の萌えスロとは その2

Filed under: 未分類 — ssk @ 17:30:59

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 ――ここは東京・上野のパチンコ村。トミー副部長はパチスロメーカー「ピッツア屋」のショールームで、同社の新台『コーマンチキ エリカ』を試打していた。

(はぁ、こりゃ酷い……。出目もシンプル過ぎるし、演出も見るに堪えないクオリティだよ。しかも設定6で99%!? ダメだこりゃ。売れたら奇跡だな)

心の中で貶していると、そこに担当者の佐藤が現れた。

「いや~、トミーさん。今日はお疲れ様です。どうですか、この台? イケてるでしょ!」

そ、そ、そうですね。そう言えば、このキャラはオリジナルですか? それともタイアップ?」

「基本はオリジナルですけど、モデルはいます。ほら、今話題のエリカ様ですよ。大きな声じゃ言えませんが」

「ああ、宍戸エリカですか」

「どこかにアジャ・コングが出てきましたか? 明らかに違うでしょ!」

「分かった! 桃尻だ! 『鮫肌男と桃尻エリカ』って小説もありましたね」

「沢尻! っていうか小説なんて関係ねぇし! もう勘弁してくださいよぉ~」

佐藤の顔は笑っているが、口調は明らかに怒っているようだ。

「ところでトミーさん、打った感じはどうでしたか?」

 「別に」

「本家の真似をしないで!」

「冗談ですよ。え~っと……え、演出が楽しいですよね」

「どのあたりが楽しいですか」

「あ、あ、あの『アメとムチ演出』が良いですな。可愛らしいキャラがムチで敵を倒すなんて、萌えスロの新境地ですよ。あれは最高です!」

「……は!? 萌えスロ?」

「この台は主人公が美少女だし、2次元アニメだし、セクシーな演出もあるし、萌えスロ以外の何物でもないでしょ?」

「……トミーさん、偏見はヤメてください。この台は一部のマニアに向けたものじゃなく、老若男女が楽しめる台です」

「偏見? そんなつもりはありませんけど。心外だな」

「とにかく、『エリカ』は萌えスロじゃありません! この台はアルゼさんの『ドンちゃんシリーズ』大都技研さんの『シェイクⅡ』の世界観を目指しています。だから“萌え”とは少し違うんですよ!」

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「そんなこと言っても、誰が見たって萌えスロでしょうが! そもそもドンちゃんや番長の足元にも及ばないクソ台だけどね。ハハッ」

「ほほぅ……。よし、分かった。そこまで言うなら、もうトミーさんの出版社は取材拒否だ!」

おう、やれるもんならやってみろ! こんな台しか作れない会社なんて、こっちから願い下げだよ!」

――そのエピソードを聞き終えたスロウと祐子は、呆れ顔でトミーに言った。

「副部長、これはアンタが悪い」

「そうね。同情の余地なしだわ。ゴキブリ以下よ」

「もちろん私も反省している。けど、佐藤さんの言い分も納得できないんだよ。……山岡くん、お願いだからピッツア屋と仲直りできるように手を貸してくれよ!」

「ま、確かに副部長も悪いけど、佐藤さんも勘違いしている所がある」

「スロウ、何か考えがあるのね?」

「よし、これからもう一度『ピッツア屋』に行こう」

(続く)

(c)2007 ARUZE CORP     (c)大都技研

※分かっていると思いますが、この物語は全てフィクションです

2007/10/29 月曜日

本当の萌えスロとは その1

Filed under: 未分類 — ssk @ 20:08:46

 その日の午後、トミー副部長は激しく落ち込んでいた。

「ハァ……どうしよう」 

 そんな様子を見ていたスロウと祐子はヒソヒソ話を始める。

「副部長、どうしたのかしら? 何だか元気がないみたい」

「あん? また酒で失敗したんだろ。もしくは奥さんに叱られたとか」

「待ってよ。それじゃ本家の副部長と一緒じゃない。そこまでパク……」

「本家とか言っちゃダメだって!」

「ゴメン。じゃあさ、何があったんだろ?」

「おそらく氷川のエルボー連打を喰らって、3カウントを聞いちゃったんだな」

「は? 氷川って誰よ」

「ファイアープロレスリングの名レスラーだろうが! 副部長の本名はトミー・ボンバーだろ? バックドロップが得意でさ」

「んもぅ! 分かりづらいボケは禁止! っていうか、ファイプロなんて誰も知らないわよ!」

二人の口論が続く中、トミーは大きな溜息をついて外へ出て行こうとする。それに気づいたスロウは大きな声で呼びかけた。

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「副部長、ちょっと待ってください! 一体どうしたんですか?」

「ああ、山岡君か。あのさぁ、君は“萌えスロ”って知ってるかい?」

「萌えスロ? まぁ一応は知ってますけど。最近の主流ですもんね。ドリスタ、マジハロ、シスクエ……」

「そっか。じゃあさ、アニメの美女が登場するパチスロ台は、全て萌えスロってこと?」

「機種やキャラクターにもよりますけど、まぁそんな感じです」

「……じゃあさ、なぜ私は怒られたのだ? 私は間違ったことを言ったのかな? 嗚呼、もうダメだ! あのメーカーさんに嫌われたら、ウチなんて廃刊だよ! ヒェ~!」

「ちょ、ちょっと待ってください。全く話が見えないんですけど」

ここで祐子が割り込んできた。

「もしかして、今日の新台取材で何かあったのかも。副部長、取材先で失言したんじゃない?」 

「……粟田君、実はそうなんだ。ちょっと聞いてくれるかな」

トミーは午前中に起こった“事件”について語り出した。 

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(C)NET CORPORATION 

(続く)

2007/10/23 火曜日

時代の変遷 その8

Filed under: 未分類 — ssk @ 17:59:22

「遊山さんの主張はよく分かった。そして、私は間違っていたのだと反省した」

 久々に口を開いた当真は、鼻毛を靡かせながら静かに語り出した。 

「貴方の言うとおり、パチスロは出玉だけじゃない。私は5号機の出玉性能ばかりを攻撃して、他の魅力を見逃していたよ。スロウさん、貴殿も反省しなさい」

 「ちょ、ちょっと待ってよ! それじゃ俺が遊山に負けたみたいじゃん!」

「5号機はスペックの高さよりも、ゲーム性全体のクオリティを重視すべし。これほど明晰な解説はないだろう? 私は目から鱗が落ちたよ。スロウさんの完敗だ」

「じゃあさ、毎回ショボ勝ちでも満足できるのかよ! 演出がスゲー楽しくても、いつかは飽きる。それにダラダラした出玉挙動は我慢できないハズだぜ! ギャンブルである以上、コインが一気に増えなきゃつまらん!」 

「何だ? 貴殿はアンチ5号機だったのか? ついさっきまでの私みたいだ」

「……」

 劣勢となったスロウに遊山がダメ押しする。

「スロウ、醜いぞ! 貴様の出玉性能至上主義など、所詮は厨房の理論なのだ!」

「くそっ、さりげなく2ちゃん用語で罵倒しやがって! 余計にムカツク」

「ま、せいぜい頑張って提灯記事でも書けば良い。貴様の幼稚な記事など誰も読まんがな。ハハハハ!」

――遊山はホール中に高笑いを響かせながら去っていった。その後ろ姿を見ながら、スロウは呟く。

(そりゃ俺だって分かってるさ。でも、出玉を軽視したらパチスロというジャンルが……)

 気がつけば午後10時45分を回り、店内には蛍の光が流れている。いつの間にか当真も帰ったらしく、北斗2に座っているのはスロウ一人だけ。他のシマを見渡しても数人しか座っていない。景品カウンターの女性店員は欠伸をしながら客が捌けるのを待っている。

 何か諦めたような表情を浮かべながら、スロウは新宿の華やいだ夜へと歩いていった。

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(時代の変遷 完)

2007/10/5 金曜日

時代の変遷 その7

Filed under: 未分類 — ssk @ 22:30:24

遊山に促されるまま、スロウと当真は北斗2に座った。

しばらく すると、スロウの台にヒューイが登場し、そのままバトル演出へ発展する。そう、これはボーナス確定パターンだ。すかさず遊山が口を挟む。

「ほら、アチいだろ! おっ、しかもBIGじゃないか! これは最高だな! ハハハ!」

「……何? そのテンション。つーか、BIGで200枚ぐらいしか取れないじゃん。それほど興奮することじゃないよね」

 「いくらスパイダーのMIDと同じぐらいの獲得枚数でも、BIGに変わりはない。いくら枚数が少なくても、これ以上コインが増えるポイントはないのだから、喜んで然るべきなのだ!」

「……それって北斗を貶してないか? 要するに無理にでもテンションを上げろってことかよ」

「フフッ、貴様はまだ気づいていないな。まぁ良い。しばらく打ち続けてみなさい」

スロウの台はRTに突入した。その後は順調に継続し、気がつけば12連を突破。

「チッ、また継続かよ」

「貴様、舌打ちしただろ! 面倒くさいと思っただろ! コインが減るからストレスが溜まるって思っただろ!」

「お前は北斗の味方なの? 敵なの? ……あっ、ラオウが負けた。チャンスタイムに突入かぁ。ここは自力でチェリーを回避しなきゃ……おっ、『?』ナビだな。ここは赤チェを……クソッ! ハズした~!」

「スロウ、それだよ」

「へ? 何が?」

「今、チャンスタイムでアツくなったよな」

「ま、まぁそうかも」

「今まで貴様はRTを軽視していた。いや、むしろ北斗2全体を軽視していた」

「……」 

「本来であれば、RTが継続しようが、しまいが、どちらでも良いと思うだろう。もっと言えば、どうせ北斗の出玉性能は低いから、頑張ってもショボ勝ちだから、打つこと自体がナンセンスと考えていたハズだ。それなのに、貴様は一瞬だけ我を忘れて興奮した」

「だ、だから何だよ」

「パチスロという遊技機が持つ性格。それはギャンブルだけではない。出玉性能、勝ち負けに関係なく、思わず興奮してしまう瞬間が必ずあるのだ。もちろん人によって差はあるが。とにかく、その側面を忘れて単に出玉だけを追求するのは由々しき問題である」

 「それは違うな。結果的に出玉という対価を得られるからこそ、演出やリール制御にアツくなれるんだ。出玉に直結しない部分で興奮できるワケがない。今のチャンスタイムだって、俺はRTが継続するほど出玉的に有利だと知ってた。だから少しだけ興奮したんだ」

 「その割には、継続する度に舌打ちをしてたよな」

「あれは舌打ちじゃない! 可愛い小動物を呼んでたの!」

「……うわっ、随分と酷い言い訳だな。フフ、まぁ良いだろう。いずれにせよ、出玉性能が低くても、楽しめることは証明できたハズだ。つまり、どんな5号機でも十分に打つ価値はある!」

「あ、あの~、私をお忘れじゃ……」

2人が口論している脇で、当真は困惑していた。 

(続く)

2007/9/17 月曜日

時代の変遷 その6

Filed under: 未分類 — ssk @ 22:31:07

――3人は新宿にある某ホールへ着いた。

 「スロウ、そこの紳士、その台に座ってみなさい」

遊山は『北斗の拳2 乱世覇王伝 天覇の章』を指差した。

「お、おい、それは……!」

「スロウ、貴様が言いたいことは何となく分かる。だが、ここでは言うな。決して言うでないぞ」

「……とにかく当真さん、アイツの指示に従っちゃダメだぜ。嫌な予感がする」

 しばらく口を閉ざしていた当真が久々に話し出す。

「しかし、私は遊山さんの真意を知りたい。貴殿よりも頼りになりそうだし」

「何だよ、それ……。あのさ、ちょっと聞きたいんだけど、当真さんは歴代北斗シリーズにハマった人かな?」

「まぁ、それなりに」

「んで、もう北斗2は打った?」

「いや、まだ」

「……そっか。おい、遊山! 俺たちに北斗2を打たせて、どうするつもりだ? もしかしたら、当真さんは余計に5号機が嫌いになっちゃうかもしれないぞ!」

「フフフ、だから貴様は甘いのだ。パチスロという遊技機の存在意義を全く知らないのだな

「ど、どういう意味だよ」

「一つの価値観でしか物を見られない人間は、まさしく愚の骨頂。端的に言えば馬鹿である」

「は? 馬鹿って言っちゃう奴のほうが馬鹿なんだよ!」

「なんだと~! お前の母ちゃんデベソ~!」

「俺の母ちゃんはお前の嫁さんだろ!」

「はっ! そうだった……」

「スロウさん、遊山さん、子供のようなケンカは止めてくれ! 遊山さん、あなたは何が言いたいの?」

パチスロ=ギャンブル。この公式は極めて正しいが、それだけが答えではない。特に5号機はギャンブル、お金という側面から見ると、ひどい代物に思えてしまう」

スロウと当真は黙って聞いている。

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「ストック機、AT機が食欲を満たす分厚いステーキならば、5号機は体調を整える粥(かゆ)。今までステーキに慣れ親しんだ人間は、お粥を出されて一瞬戸惑うだろうし、嫌悪するかもしれない。しかし、もう体は通風の一歩手前。成人病のイーシャンテンである。そんな体にお粥は最適だ。米の絶妙な甘み、旨味、塩気が食道を通過し、そして胃袋に優しく染みこむ……。確かに5号機はストック機などに比べて出玉が少々寂しいが、その分だけパチスロ本来の楽しさをゆっくりと味わえる。ギャンブル続きで痛んだ精神を優しくケアしてくれるのだ!」

「……あの~、悦に入っているところ申し訳ないんだけど、言ってる意味が全然分からんよ。なぁ、当真さん?」

「ニュアンスは分かるけど……」

「貴様たちはどこまで馬鹿なのだ! ほら、早く北斗2を打ってみろ!」

(続く)

2007/9/7 金曜日

時代の変遷 その5

Filed under: 未分類 — ssk @ 22:42:09

回胴遊山――。彼は「回胴美食倶楽部」という名のホールを経営する傍ら、“至高のスロット”を求めて日々研鑽に励んでいる。スロウたちの“究極のスロット”とは犬猿の仲らしく、何かにつけてケンカしているようだ。

「スロウ、こんなところで何をしている? このホールは私の根城だ。今すぐ去れ」

「は? 別にお前の店じゃないだろ。寝ぼけたことを言ってんじゃねぇよ!」

「おっ、随分と汚い言葉遣いだな。己の学の無さを露呈しているようだ。ハハ!」

「……一体何なの? 俺たちの邪魔をしないでくれよ」

貴様の5号機に対する意見は間違っておる!

「ど、どういう意味だよ?」

「確かに5号機にもハイスペックの機種は存在する。しかし、それだけをピックアップするのは卑怯だ」

「実際に機械割120%程度の機種はいくらでもあるだろ。バカじゃないの」

「フッ、またもや罵倒か。父ちゃん情けなくて涙が出らぁ」

「あばれはっちゃくかよ。っていうか、俺たちは親子の縁を切ったんだろ」

「その話はまたの機会に。スロウ、横にいる紳士は5号機全般の出玉性能が低いと言っているのだ。それは真実であり、揺るぎない事実。いくらハイスペック機をアピールしても、その他大勢の機種はロースペックだ。とても残念な話だが」

 「……」

 「『納豆は臭いから嫌い』と主張する少年がいたとしよう」

 「は? いきなり何だよ」

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 「中には臭くない納豆もあるが、ほとんどは臭い。これは紛れもない事実だ。数少ない無臭納豆を指して“これで大丈夫でしょ”と諭しても、本質的な解決にはならない。そもそも、相手を騙しているようでフェアじゃない」

「そんで?」 

「本当に納豆の魅力をアピールしたいなら、別のアプローチをせねばならん。匂いのキツさを前提にしてそれを上回る魅力を説明するのだ。……スロウとそこの紳士、私に付いてきなさい」

――遊山は2人を外に連れ出し、5号機のバラエティコーナーが設置してあるホールへ向かった。

(続く) 

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